「自社で中途採用を始めようと思っている」
「実際に採用する場合、どうやって進めればいいの?」
このように考えている方が多いのではないでしょうか。
中途採用は新卒採用と異なる部分があり、しっかりと理解しておく必要があります。
また、手順について知っておくと、よりスムーズに作業を進めることが可能です。
今回の記事では中途採用の基本知識、新卒採用や第二新卒との違い、実際に進める際の手順などについて解説します。
これから中途採用しようと考えている企業は、ぜひ参考にしてみてください。
中途採用とは?
中途採用とは、すでに就業経験がある人材を企業が不定期に採用することです。
新卒採用以外は、年齢などに関係なく中途採用に分類されます。
即戦力が期待できる、外部ノウハウを得られるなどが中途採用の主なメリットです。
一方で、中途採用には大量採用がしにくい、新卒よりも順応性が低いなどのデメリットもあります。
メリットだけではなく、デメリットも把握したうえで計画を進めましょう。
中途採用と(第二)新卒採用の違い
企業が人材を採用する手段として、大きく分けて新卒採用と中途採用が挙げられます。
具体的な違いについて、以下の表で確認してみましょう。
目的 | 採用ターゲット | 採用人数 | 募集時期 | 研修 | |
---|---|---|---|---|---|
中途採用 | ・即戦力の確保 ・ノウハウの吸収 ・人員補填 | 社会経験を持つ人材 | 需要に応じて可変 | 通年 | 部門や役職に応じた専門研修やOJT |
新卒採用 | ・人員最適化 ・幹部候補の育成 | その年に大学や専門学校を卒業する学生 | 年次定員 | 定期 (3月~6月あたり) | 一般的に研修プログラムあり |
さらに違いを理解するために、曖昧になりやすい「第二新卒」という言葉の定義も確認します。
「第二新卒」とは、大学や専門学校を卒業後に新卒で入社し、社会人経験が3年未満の若手人材を指す言葉です。
そのため言葉の定義上では、第二新卒は「中途採用」に該当することになります。しかし、新卒採用の枠で第二新卒を募集している企業もあるため、その認識は企業によって異なるのが現状です。
より詳しく新卒採用について知りたい、流行りのジョブ型新卒採用との違いを理解したい方は、こちらの記事もあわせて読んでみてください。
中途採用には主に3種類ある
中途採用で採用する人材は、「若手人材」「即戦力人材」「管理職人材」の3種類に分類できます。
それぞれの違いについて、以下の表で確認していきましょう。
種類 | 特徴 |
---|---|
若手人材 | ・社会人経験3~5年程度を主に狙う ・第二新卒と呼ばれる大学卒業後3年以内の人材も狙う場合がある ・基礎的な社会人のマナーを押さえている ・即戦力とまではいかないまでも優秀な人材を確保できる |
即戦力人材 | ・社会人経験3~5年以上のプロを主に狙う ・即戦力になりやすい ・自社ノウハウの強化につながる ・中途採用といえば即戦力人材に当たることが多い ・キャリア採用と呼ぶこともある |
管理職人材 | ・社会人経験10~15年以上の管理職を狙うことが多い ・マネジメントスキルが高く、リーダーシップのある人材を得られる ・ヘッドハンティングで狙うことも多い |
自社のフェーズに合わせて、必要な人材を補填していくことが大切です。
職種別有効求人倍率(2023年4月)
上記では中途採用における3つの人材の種類をご紹介しましたが、ここからは職業によって採用状況がどのように異なるのか、確認していきましょう。
職種 | 有効求人倍率 |
建築・土木・測量技術者 | 5.97 |
介護サービスの職業 | 3.02 |
接客・給仕の職業 | 2.28 |
営業の職業 | 2.11 |
商品販売の職業 | 1.75 |
情報処理・通信技術者 | 1.64 |
一般事務の職業 | 0.32 |
上記の通り、有効求人倍率が2.11倍と比較的高い営業職は、求職者の数に対して求人数が相対的に多いことを示しています。
この情報を踏まえると、中途採用で優秀な営業職社員を採用する際には、企業側は受け身の姿勢ではなく、自らの戦略的なアプローチが必要不可欠となってきます。
中途採用のメリット
中途採用のメリットとして、主に以下の5つが挙げられます。
それぞれのメリットについて、見ていきましょう。
即戦力として採用ができる
近年、企業の事業が急速に多角化し、同時に業務範囲も拡張している傾向があります。
中途採用であれば、他社で営業経験を積んで、既に顧客との関係構築やセールススキルを磨いている営業のプロフェッショナルを採用することができるため、迅速にコミットし成果を上げることが期待できます。
ただし、特に営業職人材の採用は競争が激しく、即戦力の人材を競合他社も狙っています。
そのため、近年では中小企業だけではなく、大手企業でも一般的に採用が行われています。
育成・教育コストを抑えることができる
通常、新卒営業職の育成・教育には時間とコストがかかりますが、中途採用は他社で既に育てられた人材を採用するため、研修や教育プログラムに割く時間とリソースを削減できます。
特にスタートアップ、ベンチャーなど、育成コストを優先的にかける余裕がない企業にとって、これは大きなメリットといえるでしょう。
通年採用が可能
新卒採用を行える時期は限られていますが、中途採用の場合は通年採用が可能です。
常に求人を出すことができ、採用のタイミングを柔軟に調整できます。新規プロジェクトの立ち上げや市場変化の時期に対応するため、迅速に経験豊富な営業人材を組織内に補充することができるでしょう。
外部ノウハウを確実に吸収できる
中途採用で入社する営業人材は、他社で培った貴重な経験やノウハウを持っています。
彼らの豊富な営業知識や、新たな市場や顧客セグメントにおける成功パターンなどの、外部ノウハウを社内に取り入れる事が可能です。
これにより、自社の営業プロセスや戦略を見直し、より効果的な営業活動の展開が期待できます。
採用ブランディングとして機能する
中途採用は、企業の採用ブランディングにも大きく貢献します。他社の優秀な営業人材を採用することで、企業のオープンでアクティブな事業展開や成長戦略のアピールにつながるでしょう。
これにより、自社に興味を持った優秀な人材が引き寄せられることで、採用の競争力が高まる好循環を作ることが出来ます。
また、採用ブランディングの強化は、企業イメージの向上にもつながり、将来的な事業活動においても有利に働くでしょう。
中途採用のデメリット
中途採用のデメリットとして、以下の3つに注目しましょう。
- 新卒よりも順応性が低い
- 早期離職の懸念がある
- 大量一括採用ができない
メリットだけではなく、デメリットも把握しておくことが大切です。
新卒よりも順応性が低い
営業職の中途入社者は、既に職務経験があるため、独自の企業観や仕事観を強くもっている可能性があります。そのため、自社の風土やビジネススタイルに順応するまでに時間がかかる場合があります。
一度独自の価値観を持ってしまうと、その後の柔軟性が失われてしまう人もいます。
現在の営業組織への高い適応力(フレキシビリティ)を求める場合には、新卒採用を検討することがおすすめです。
早期離職の懸念がある
営業職の中途入社者は、既に高いスキルや経験があり、売り手市場の職種でもあるため、独立や他企業への早期流出の可能性が大いにあります。
そのため、中長期的に見るとコストパフォーマンスの低い投資となる可能性があります。早期離職を防ぐためには、待遇の改善やキャリアパスの整備など、魅力的な環境を提供することが重要です。
大量一括採用ができない
営業職の中途採用は、大量採用には向いていません。中途採用は主に欠員補充や特定のポジションへの採用に向いています。
一方、大量採用を検討している場合には、母数の多い新卒採用を検討することが効果的です。
社内の状況を踏まえて、現在の自社に必要なリソースを正確に見極めることが重要です。
【2023年動向】中途採用の市場分析
中途採用市場の現状分析を行うと、以下の3つの傾向が見えてきます。
- 中途採用の採用難が悪化
- 全ての業種で採用意欲が回復傾向
- 異業種・異職種採用が進む
中途採用を行う前に、まずは1度チェックしておきましょう。
中途採用の採用難が悪化
近年では、中途採用の採用難が悪化しています。
特に2022年では多くの企業が中途採用における人材を確保できなかったと回答しています。
例年と比べても最も低い結果となっており、日本全体で中途採用における人材確保が難しくなっていることがわかります。
全ての業種で採用意欲が回復傾向
近年では日本全体で中途採用における人材確保が難しくなっていますが、全ての業種で採用意欲が回復している傾向にあるのも事実です。
2023年の結果を見ると、全ての業種において「増える」が「減る」を上回っているのが現状です。
また、大企業でも採用意欲の回復が顕著になっています。
こういった意欲の向上が、今後の中途採用の改善につながることが期待されています。
異業種・異職種採用が進む
現在の採用難の結果、異業種・異職種の採用が大企業中心に急増しています。
異業種・異職種の採用でも、優秀な人材を確保できれば早い段階で自社の戦力となってくれるからです。
今後は同業種・同職種の採用にこだわらず、異業種・異職種の採用を検討する必要が出てくるでしょう。
中途採用活動の6ステップ
中途採用を進める流れは、以下の通りです。
それぞれの流れについて、見ていきましょう。
① 人材ニーズの分析
まずは自社が営業職を採用する際の要件を採用担当側で明確にしましょう。
どのような職種やポジションが必要であり、どのようなスキルや経験、採用条件が求められるのかを把握します。現在の営業組織のニーズを調査し、求める人材像を明確にすることが重要です。
求人の作成、掲載を行う際のヒントになるので早い段階で人材ニーズを分析しておきましょう。
② 採用計画を立てる
人材ニーズの分析が終わった後は、採用計画を立てて採用手段の選定を行いましょう。
それぞれの選考フローの目的を理解し、明確に定義することがポイントです。
計画を立てる際は、以下のようにまとめるとわかりやすいでしょう。
【例】
募集背景 | 新規市場開拓のため、積極的な営業力を持つ人材を募集 |
人数 | 3人 |
納期 | 6か月 |
予算 | 200万円 |
KPI | 応募数、面接通過数、採用決定数など |
KPIの選定も行い、採用計画のイメージをより明確にすることが大切です。
③ 求人の作成と掲載
採用計画に基づき、求人媒体を選定しましょう。
求人広告、キャリアサイト、SNSなど、求人媒体は多岐に渡るので自社にあった媒体を選ぶ必要があります。
また、より円滑に採用を進めたい場合は、エージェントとの連携も一つの手段です。
採用プロセスの選定、選考のアドバイスや手配などをサポートしてくれるため、採用媒体だけではなくエージェントの選定も行うと良いでしょう。
④ 応募者の選定
書類選考、面接、筆記試験、実技試験などを実施し、最終的に採用する人材を決定しましょう。
注意事項として、以下のポイントが挙げられます。
- 面接を行う面接官は応募者の企業イメージに直結するということ
- 双方がマッチングをするか図る場であることを忘れないこと
- 質問時間を設けて、お互いの疑問を解消すること
相互理解を深めるために、工夫をほどこすことを忘れないようにしましょう。
⑤ 内定の決定と交渉
応募者の選定が終わった後は、内定の決定および交渉を行いましょう。
応募者の実績、スキル、面接での態度などを総合的に見て判断するのが大切です。
単純に実力のある人材だけではなく、自社にマッチするかどうかという視線で人材を選びましょう。
⑥ 入社前フォロー・オンボーディング
中途入社者の早期定着・即戦力化や、内定辞退防止にむけた施策として「オンボーディング」の取組みがおすすめです。
オンボーディングではサポートを徹底して行うため、スキルや自社への理解度向上につながります。
採用難が加速化する中、内定者へ先行投資することで、定着率の向上が見込めるでしょう。
中途採用を最大限に活かす体制づくりとは?
中途入社の社員が活躍できるまでには、様々な壁が存在します。
以下のポイントを意識して、中途入社の営業職社員が働きやすい環境を構築しましょう。
セーフティネットを設ける
営業職の中途採用社員は、既存のチームやコミュニティに慣れるまでに時間がかかることがあります。入社後になるべく早く慣れてもらうためには、業務内外でのコミュニケーションが重要です。
具体的には、新入社員を関係者に紹介したり、ランチや飲み会などの機会を設けて積極的な交流を促しましょう。営業活動のサポートや業務上の質問にはいつでも応えることで、新入社員が安心して働ける環境を整えます。
メンター制度を導入する
営業職の中途採用社員が不安を感じないようにするために、メンター制度を導入することが有効です。具体的には、経験豊富なベテラン営業社員を新入社員のメンターとして指定し、定期的な面談やアドバイスの場を設けましょう。
メンターは、業務に関するサポートや疑問解消、営業スキルの指導を行います。コミュニケーションの機会を提供することで、社内のつながりを深め、早期離職を防止する効果もあります。
社内で情報共有を行う
中途採用された人材は教育コストを抑えられるのがメリットですが、なるべく情報共有を行うのが大切です。仕事の進め方、細かいコツ、部署間の連携などを教えておくとよりスムーズに業務を進められます。
業務ストレスの軽減にもつながるため、情報共有をする体制は必ず作っておきましょう。
定期的な面談を設ける
営業職の中途採用社員との定期的な面談は、意見交換やフィードバックの機会です。
具体的には、上司やメンター、チームリーダーとの月次面談やパフォーマンスレビューを実施しましょう。面談では業績や目標達成状況の確認だけでなく、社員の意見や課題にも耳を傾け、そこから社内の改善策の発見も行いましょう。
また、メンタルケアにも配慮し、プライベートな問題やストレスなどについても話し合う機会を設けましょう。
まとめ
中途採用は、優秀な人材を補填する際に向いている採用方法です。
ただし大量採用に向いていない、早期離職の可能性があるというデメリットもあります。
メリット・デメリット、新卒採用との違いを把握しておかないと、思ったような採用は実現できません。
今回の記事を参考にしつつ、自社の状況も踏まえながら採用方法を考えてみましょう。
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