客単価を上げるアップセル・クロスセルとは?事例をもとに施策を徹底解説!

営業ノウハウ
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自社の売上を算出する際、構成する要素としては「客数 × 客単価 × 購入頻度」が一般的です。

一定以上顧客が増えてきえてから、収益をより一層伸ばしていくためには「客単価」を高める施策が重要となっています。

そこで本記事では、客単価を高める基本である「アップセル」「クロスセル」の意味や施策事例をご紹介します。

客単価の意味・重要性

まずご紹介するのは、本記事の根幹となる客単価(顧客単価)についてです。

この重要性に関しては、中小企業の経営者の方々は十二分に理解していると思いますが、再確認としてご一読ください。

客単価とは

客単価とは 意味

初めに、客単価とはその名のとおり、顧客が1回の買い物で支払う平均金額のことです。

計算方法は、「特定期間の総売上」÷「同期間の総顧客数」です。

客単価 計算方法 意味

注意点としては、特定期間の設定によって結果が大きく変動する点です。季節性の高い(時期によって売上変動が大きい)商材を扱っている企業であれば、期間の設定は慎重に検討すべきでしょう。

この客単価は様々な要素によって構成されており、以下がその代表的な例です。

  • その時の経済状況(不況など)
  • 給料日後など顧客ごとの購入タイミング
  • 商品パッケージ(セット商品など)
  • お店への信頼度(初回来店なのかリピーターなのか)

ご覧の通り、客単価は様々な不確定要素で構成されています。

しかし、事業を運営する以上、どんな状況でも可能な限り1度の買い物で多くのお金を消費して欲しいですよね…

では、具体的にどのような点で客単価が重要なのか、特に認識しておきたい3点をご紹介します。

客単価 重要性 理由 なぜ

重要性①:売上への貢献率が高い

客単価が重要な理由の1つ目は、売上に直接影響する要素であり、かつその貢献率が高いからです。

その事例として、飲食店を例にとってご紹介します。
飲食店は、席数に制限がある以上、回転率をあげないと全体の来店数には限界があります。また、購入頻度もよっぽどの魅力がない限り、ランチであれば月5回程度の来店があれば十分でしょう。

この条件のもとだと…

飲食店の売上=
客数(席数×回転数×営業時間)× 客単価 × 頻度(5回)

その中でも、客数と購入頻度については、多くの予算や時間をかけても変動しにくく、効果も不確定な要素が強いです。

しかし、客単価を上げてみるとどうでしょうか?

もし先程の事例で、客単価が100円上昇したとすると、そこに純粋に「客数×頻度」が掛け算されるので、客数と頻度よりも売上への貢献率は高くなる傾向があります。そのため、他の要素と比較してコストパフォーマンスが高い指標と言えるでしょう。

重要性②:施策が打ちやすく選択肢も多い

客単価の重要性のもう1つの要素として、施策を比較的打ち出しやすいという点もあげられます。
他の要素と比較して、考えてみましょう。

例えば、客数の増やす施策を飲食店の事例で考えると、工事やリフォームにより、箱となる店舗の規模を大きくするのが一般的です。席の大きさを変更するのも1つの手段ですが、その場合注文する品数がテーブルの幅と比例して減少する可能性があります。

また、来店頻度を上げるというのもハードルが高く、クーポン券や会員証発行などの施策がありますが、その仕組みを作る工数がありますし、対象が個人なので中長期的な施策になると考えられます。

その反面、客単価はいかがでしょうか?
例えば、メニューに「今日はこれがオススメです」という項目を増やすだけでも、注文を追加してくれる可能性もありますし、セット販売にすることで単価を上げるなど、できる施策の幅が大きく、柔軟に打ち出しやすいものが多いです。

重要性③:新規顧客の獲得はハードルが高い

前提として、客単価において向き合うべきなのは、「新規の顧客獲得」ではなく「既存顧客の維持」です。

そして、一般的に新規の顧客を獲得するよりも、既存顧客を維持する方がハードルが低いとされています。

フレデリック・F・ライクヘルドが提唱する「1:5の法則」という概念では、新規顧客への販売コストは、既存顧客への販売コストよりも5倍もかかることが明らかにされました。

さらに、既存顧客の維持率を5%上げると、収益を25%も改善できるという「5:25の法則」も存在します。

以上のことから、客単価には、売上に大きな影響を与えやすく、施策もハードルが低く打ちやすいという特徴があるため、事業運営において重要な要素だと分かります。

次項からご紹介するのは、その試作の大きな軸となる2つの考え方です。

アップセルとは?

客単価をあげる上での軸となる考え方、1つ目はアップセルです。

アップセルとは、顧客が既に購入しているものよりも、上位グレード・モデルを購入してもらい、顧客1人当たりの単価を上げる施策のことです。

この施策は、近年重要視されているLTV(顧客の生涯価値)を高めることに直結するため、より注目を集めています。

ややイメージしづらいと思うので、日常におけるアップセルの事例をご紹介すると、

飲食店のコースメニュー
  • 3,000円の宴会Aコース
  • 4,500円の宴会Bコース
  • 8,000円の宴会Cコース

上記のメニューがある飲食店で、顧客のAさんは、前回Bコースを注文しました。
その後、再度このAさんがお店を利用する際に、より上位グレードのCコースを販売することをアップセルと言います。

その他、下記のように、顧客が初めに選択したものよりも高価なものを提供するケースが、アップセルに該当します。

  • 商品のまとめ買いを提案する
  • スマホ購入時に大容量メモリのモデルを提案する
  • サブスクリプション(定期購入)のプランに移行してもらう

ただし、ここでの注意点は、単に闇雲にプランを増やして高いものを提案すればいいという訳ではありません。

  • 上位モデルの追加価値を顧客に訴求できるのか
  • 上位モデルを顧客は求めているのか
  • 提案のタイミングは今が最適なのか

このように、アップセルをする際には、「顧客理解」が必要不可欠だということです。

クロスセルとは?

続いて、もう1つの客単価をあげる軸となる考え方が、クロスセルです。

クロスセルとは、顧客が購入を検討している際に追加で購入を促して、客単価や顧客満足度を上げる施策のことです。

こちらも飲食店の事例でわかりやすく考えると…

飲食店が実施するクロスセル
  • 3,000円の宴会にプラス1,500円で生ビール飲み放題がつく
  • 1,000円のランチにのデザート(150円)やビール(300円)などもセットで選べる

こちらもアップセルと同様に、「顧客理解」はかかせません。
ランチで来店した顧客に対して、ディナーメニューのおつまみ等を提案しても購入してくれる人は少ないでしょう。その場合であれば、ドリンクやデザートの方が需要に合っているでしょう。

アップセルとは異なり、ここで重要なのは、顧客自身がまだ気付いていない潜在的なニーズを満たしてあげる事です。ECサイトのリコメンド機能がその代表例と言えるでしょう。

アップセル・クロスセルで持つべき視点

続いて、アップセルとクロスセルをいざ実施する際、どのような視点をもって事業と向き合えばよいか解説します。

上記の2点について、それぞれ詳しくご説明します。

ロイヤリティ顧客の潜在的ニーズを満たす

先述しましたが、顧客を理解し隠れたニーズを捉える取り組みは、アップセル・クロスセルの施策を決める際に必要です。

商品・サービスを、どんな内容にすれば購入してくれるか明らかになるためです。

追加購入・複数購入する顧客の心理
  • こんな商品が今あれば良いな
  • こんな機能がさらに欲しい

このように顧客には、更なる付加価値への期待や、多少の不満が少なからずあるはずです。

過去の購入履歴や、オンラインであれば商品ページの閲覧履歴などを分析することで、必然的にアップセル・クロスセルで提案するべき商品・サービスが見つかります。

ただし、提案する場合は、ロイヤリティの高い顧客を優先するようにしましょう。
つまり、既に自社に対して信頼をもっていて、商品・サービスにも愛着を感じているであろう顧客に優先してアプローチするのが推奨されます。ロイヤリティが低ければ、新規の提案は疎まれてしまう可能性が高いでしょう。

リピーターを第1優先で考える

アップセル、クロスセルにおいてはリピーターが主役となります。理由としては、顧客との信頼関係が如実に結果に反映される営業手法だからです。

恐らく多くの方に経験があると思いますが、初めて行ったお店で過度に商品の提案をされても、購入しようと思う人は少ないはずですし、むしろ不快感やストレスを感じるでしょう。

一方、既にリピート経験がある顧客であれば、何かしらの価値や信頼を自社に感じているので、初回来店者よりも新規提案を受け入れてもらいやすいでしょう。

これを試作段階まで落とし込むと、例として下記はいかがでしょうか。

リピーターに着目した施策例
  • 会員証(初回は利用不可)を持っている場合、全商品10%オフクーポンを配布
  • ECサイトで2回目購入の方には、より高い商品の広告を表示

大切なのは、顧客との信頼関係を客観視して、アップセル・クロスセルのタイミングを見定めることです。

▼CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)については、下記の記事をご覧ください。

アップセル・クロスセルの施策事例

最後に、業種毎にアップセル・クロスセルの事例をご紹介します。

ぜひ自社の施策の参考にしていただければ幸いです。

ジョブカン(株式会社Donuts)

画像:No.1勤怠管理・シフト管理システム「ジョブカン」 (jobcan.ne.jp)

株式会社Donutsが運営する「ジョブカン」は、企業の勤怠管理をクラウド化(電子化)するサービスです。

アップセルを非常に上手く実施している企業で、サービスの価格が機能の豊富さによって変動します。

  • 出勤管理
  • シフト管理
  • 休暇・申請管理
  • 工数管理

ジョブカンが提供するサービスは、プランの組み合わせ数で料金が上がっていきます。

利用企業にとっては必要な機能だけを選べる手軽さの利点があり、運営会社としては必要であれば高い料金を支払ってくれる企業がいるという、理にかなったサービスだと言えます。

また、クロスセルも実施できる体制を作り上げており、勤怠管理以外に企業が必要な業務を、マルっと補えるようになっています。

  • ジョブカン経費精算
  • ジョブカンワークフロー
  • ジョブカン採用管理
  • ジョブカン労務管理
  • ジョブカン給与計算

ジョブカンの事例から分かることは、ニーズを把握し、企業も喜び自社も喜ぶ、win-winなサービスを展開することが成功の鍵だと言うことです。

参考:No.1勤怠管理・シフト管理システム「ジョブカン」 (jobcan.ne.jp)

オフィスコム(オフィスコム株式会社)

画像:オフィスデザイン・オフィス移転ならオフィスコム株式会社 (officecom.co.jp)

オフィスコム株式会社は、オフィスレイアウトをメインとした事業を運営している企業です。

オフィスレイアウト以外にも、小規模の工事もプランとして用意しており、アップセルを通して客単価・顧客満足度の向上に努めています。

  • 電気・照明工事
  • 内装工事
  • 防犯セキュリティ

また、クロスセル施策としては、下記のような引越し関連のサービスも用意しています。

  • オフィス移転
  • 原状回復・現状復帰

オフィスレイアウトを作るだけではなく、レイアウト実施後の顧客ニーズを想定して、様々な施策を用意しているのが成功の鍵だと考えられます。

参考:オフィスデザイン・オフィス移転ならオフィスコム株式会社 (officecom.co.jp)

まとめ

いかがでしたでしょうか。

客単価の重要性、そしてアップセルとクロルセルという考え方についてご理解いただけたでしょうか?また、いざ導入をしようとした際どのような考え方で施策を作れば良いのかの参考になれば嬉しいです。

また、筆者が調べて感じたのは、どの企業も自社サービス周りのかゆい部分に目を向け、付加価値を見つけていると思います。

ぜひ、自社サービスで他にお客様が喜んでくれることはないか?を考えていただければ幸いです。

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