企業経営において欠かせない「LTV」と「CAC」。耳にしたことはあるけれど、何を表しているのか、どのように活用すればいいのかがよく分からない、という方も少なくないでしょう。
そこで、「LTVやCACは何を意味するのか?」「これらを上手く使えばどう経営が良くなるのか?」について分かりやすく解説します。
LTVとは

Life Time Value(ライフ タイム バリュー)とは、「顧客の生涯価値」を表す言葉であり、頭文字をとってLTVと略されます。このLTVにはいくつかの考え方がありますが、一般的には、「顧客が生涯を通じて企業にもたらす売上から、各種費用を差し引いた後に残る利益」のこと。ビジネスを短期的な視点ではなく、長期的な視点で考えるうえでとても重要な指標です。
LTVの算出方法
LTVの算出方法は、業種や業態、考え方によって異なります。利益をベースに考えることが多いですが、簡易的に売上をベースに考えることも。いくつか例をあげてみましょう。
(1)売上ベースのLTV
LTV=平均購買単価×購買頻度×購買継続期間Aさんはデパートで1回2万円の買い物を年に5回、これを10年間続けたとします。
この場合のLTVは次のとおりです。
LTV=20,000×5×10=1,000,000円
(2)利益ベースのLTV
LTV=(平均購買単価×購買頻度×購買継続期間)-(新規顧客獲得費用+既存顧客の維持費用+商品原価)先ほどのAさんを顧客にするための宣伝費が5万円、Aさんを顧客につなぎとめるためのDMなどが年間1千円、商品の原価率が5割だったとします。
この場合のLTVは次のとおりです。
LTV=1,000,000-(50,000+1,000×10+1,000,000×0.5)=440,000円
(3)概算利益ベースのLTV
LTV=(売上高-売上原価)÷顧客数
事業全体の売上高1千万円で売上原価が500万円、顧客数が10人だったとします。
この場合のLTVは次のとおりです。
LTV=(10,000,000-5,000,000)÷10=500,000円
このように、一口にLTVといっても、指標の算出方法は何に主眼を置くかで変わります。
LTVについて検討する際は、何をベースに考えるのか、をまず明確にするといいでしょう。
CACとは

Customer Acquisition Cost(カスタマー アクイジション コスト)とは「顧客獲得コスト」を意味する言葉であり、頭文字をとってCACと略されます。これは、「新規顧客を1人獲得するために、どれだけのコストを要するか」を示す指標ですが、このCACは単独で良し悪しを評価できる指標ではなく、先述したLTVとのバランスを考慮することで、はじめてその良し悪しを判断することができます。
このCACは
・Paid CAC(お金をかけたマーケティングによる顧客獲得コスト)
・Organic CAC(自然流入による顧客獲得コスト)
・Blended CAC(上記の2つを合算した顧客獲得コスト)
の3つに分類することができます。それぞれの分類について、1つずつ見ていきましょう。
Paid CAC(お金をかけたマーケティングによる顧客獲得コスト)
Paid CACは、費用が発生するマーケティング活動による顧客獲得コストです。
例えば、マーケティング戦略の立案費用や、リアル・Webでの販売促進費、営業担当者の人件費などが該当します。
Organic CAC(自然流入による顧客獲得コスト)
Organic CACは、自然に獲得できた顧客の獲得に要したコストのこと。
例えば、自社サイトのSEO対策ソフトの料金や、サイト運営の人件費などが該当します。
Blended CAC(上記の2つを合算した顧客獲得コスト)
Blended CACは、上でご紹介したPaid CACとOrganic CACを合算したコストのこと。ビジネスの中で、CACという言葉が出てきた場合は、Blended CACを指すことが一般的であり、より細かい話になった時には、上記の2つに分類して指標を設計していきましょう。
CACの算出方法
CACは
CAC=顧客獲得コスト÷獲得できた顧客数
で算出することができます。
CACを管理する目的は、その事業が「利益の出るビジネスモデル」になっているか否かを把握するため。「顧客獲得にどれだけのコストを要しているのか」「実現した顧客獲得数と比較して効率の悪いマーケティングになっていないか」などの定点観測が大切です。
また、顧客獲得までの「期間」も重要です。
中小企業の重要な経営課題の1つとして資金繰りが挙げられますが、この資金繰りという視点でビジネスを考えると、まず最初に顧客獲得コストの支出があり、その後に顧客獲得による収入が入ります。この支出から収入までの期間が長ければ長いほど、たくさん必要になるのが運転資金です。収益化までの期間が長いと、運転資金が多く必要となる結果、資金繰りが悪化してしまうことも。資金が潤沢でない場合、この視点でのCAC管理も不可欠です。
目安として、顧客獲得コストを顧客獲得から6~12カ月以内に回収できるビジネスモデルを目指すといいでしょう。
ビジネスを成長・存続させるために重要なのはLTVがCACの3倍以上であること
LTVとCACの意味と算出方法を紹介してきましたが、ビジネスモデルの良し悪しの判断材料として、「LTV÷CAC>3」となっているかどうか、を確認する、というものがあります。
「LTV÷CAC>1」であれば会社に利益は残る計算になりますが、これの数値が1に近ければ近いほど、回収期間を考えた場合には資金繰りの問題が生じます。
また、金融機関からの借入を運転資金に回している場合の支払い利息も勘案すると、経常収支はシビアな数字になってしまいます。
「LTV÷CAC」の数値を高めるためのポイントは、LTVを高め、CACを抑えること。そのために有効な方法を解説していきます。
LTVを高める
1つ目の方法が分子となるLTVを高める、というもの。この数値は、大きければ大きいほど自社の売上・利益に寄与します。そしてこの数値を高めるには、「平均購買単価を上げる」「購買頻度を高める」「顧客である期間を長くする」などが有効です。
食品スーパーで例えると、キュウリの近くに浅漬けの素やスライサーを陳列するような、クロスマーチャンダイジングで合わせ買いを誘発すれば、平均購買単価は上がります。また、チラシやイベントを増やせば購買頻度が上がりますし、シニア割引を導入すればお年寄りになっても来店しやすくなり、顧客である期間が長くなります。
これらを実現するため欠かせないのが顧客満足度を高めること。顧客が「価値」を感じてくれる商品やサービスを生み出し、継続的に提供し続けることがLTVの最大化につながります。
CACを抑える
2つ目の方法は、分母となるCACを抑えること。この数値が小さければ小さいほど、自社に利益が残る収益構造になります。
理想は、お金を使った販促による顧客獲得に頼るのではなく、自然に新規顧客が増える仕組みを作ること。SNSやECサイトの口コミなどはその最たるものであり、既存顧客による自社の紹介を促すことで、顧客獲得コストを大幅に下げることができるでしょう。
そして、そのような口コミを誘発するためには、商品やサービスの質を高めることによって、顧客満足を向上させることが有効です。
まとめ

いかがでしたでしょうか?
企業の収益を上げるためには、LTVとCACを算出し、自社の経営状態をチェックしてみることが大切です。
LTVをCACで割った値が3以上になっていない場合、顧客満足度の改善に努めるようにしてください。
<参考>
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