そんなお悩みをお持ちの方もいらっしゃることでしょう。
営業利益率は、企業の収益性を評価する上で非常に重要な指標です。
この記事では、営業利益率(売上高利益率)の計算式や分析方法、業種別の平均目安や、成功企業が取り組む利益向上戦略について、具体的にわかりやすく解説します。
営業利益率についての理解・改善に関心がある方は、是非最後までご覧ください。
営業利益率の基礎知識
営業利益率とは?
営業利益率とは、企業の営業活動において得られる利益の割合を示す指標で、会社の収益力を測るものです。
具体的には、売上高から、売上原価や販売費などの事業に必要なコストを差し引いた利益額を、売上高に対して何パーセントを占めるかを表します。
そのため「売上高利益率」とも呼ばれています。
前提として、以下の「利益」と「利益率」の違いを再確認しておきましょう。
- 売上高から仕入れやなどの支出を差し引いたものが「利益」
- 会社の利益が売上高に対してどの程度の割合かを表すのが「利益率」
営業利益率の計算方法
営業利益率は、以下の公式を用いて計算することができます。
この公式を用いることで、営業利益率をパーセンテージで算出することができます。
さらに営業利益とは、売上高から売上原価・販売費・一般管理費を除いたものです。
具体的に売上原価・販売費・一般管理費とは、人件費や広告宣伝費、製造費、光熱費、家賃などの事業活動に必要なコストが該当します。
具体的な算出方法は、次のようになります。
以上を踏まえて、営業利益率の計算例を示します。
仮にある企業の営業利益が、1,000万円で売上高が5,000万円だった場合、営業利益率は次のようになります。
営業利益率 = (1,000万円 ÷ 5,000万円) × 100 = 20%
この計算結果から、この企業の営業利益率は20%であると分かりました。
営業利益率が重視される理由と注意点
営業利益率は、企業の純粋な利益を把握し、経営の状況や方向性を判断するために重要な要素です。
以下に、営業利益率の重要性をより詳しく説明していきます。
営業利益率が重視される理由
重要視される理由としては、主に3つ挙げられます。
経営の安定と持続的成長を促すため
営業利益率は、企業の本業における収益力、経営効率と直結する指標です。
そのため、営業利益率が高ければ、経営に対する投資や従業員への教育や報酬、株主への還元、新たな製品やサービスの開発などが可能となります。
また、営業利益率が高い企業は手元にキャッシュが残りやすく、経営活動への資金も確保しやすくなるため、企業は安定的な経営を維持し、持続的な成長を促すことが可能になります。
リスク管理と市場適応のため
営業利益率が低い企業は、経費の増加や借り入れに依存する可能性が高まります。そのため、経営環境の変化や市場の変動に対応するためには、十分な利益を確保する必要があります。
営業利益率が高ければ、企業は変化に対応しやすく、事業活動を継続することができます。
一方、営業利益率が低いと、資金調達が難しくなるため、社会情勢や市場変化に対応できず、赤字リスクが高まってしまいます。
競争力向上のため
中小企業やスタートアップ企業は、競争力を持つために効率の良い経営を行う必要があります。営業利益率の向上は、健全経営に向けての重要な戦略の一つです。
資金的にも市場において大きなシェアを持つことが難しい中小企業は、薄利多売による事業拡大は難しい場合もあります。
そのため、自社の強みを活かしてニッチな領域を狙い、営業利益率を高めることで、会社の規模に関係なく市場で競争力を得ることが可能となります。
営業利益率を重視する注意点
一方で、営業利益率には注意点も2つ存在します。
営業利益への偏り
営業利益には、企業の営業活動に関連するさまざまなコストが含まれますが、他の要素(例えば、財務活動に関連する利益や税金)は考慮されません。
そのため、営業利益率だけで企業の全体的な収益性を判断することはできません。
総合的な収益性を評価するためには、営業利益率だけ偏って考慮するのではなく、他の指標との組み合わせが必要です。
業種や市場の特性上の違い
営業利益率は、業種や市場の特性によって異なる場合があります。
例えば、市場内の企業数や商材の価格帯などの違いによっても、利益率には差が生まれます。自社の業界特性を考慮しながら、営業利益率については評価する必要があります。
業界・市場の平均値や競合他社との比較を行うことで、企業の営業利益率が優れているのか、それとも改善の余地があるのかを判断することが重要です。
後に、「営業利益率の目安と業種別比較」をご紹介するので、要チェックです。
損益計算書における他4つの利益率
前提として「損益計算書」とは、企業の経営成績を評価し、収益と費用の面から企業の健全性を把握するための重要な財務報告書です。
「収益・費用・利益」の観点で、企業の経営成績を把握することで、経営戦略や経営改善の判断材料とすることができます。
ここでは、損益計算書のなかで、営業利益率以外に記載される下記4つの利益率について解説していきます。
売上総利益率
売上総利益率は、企業が商品やサービスの売上から得る利益の割合を示す重要な指標です。
売上総利益率は、売上高から売上原価(製品やサービスの生産にかかる費用)を差し引いた金額を売上高で割ったものです。
売上総利益率が高いほど、企業は効率的に商品やサービスを生産し、利益を上げることができています。
売上総利益率が低い場合は、原価の管理や費用削減などの改善策を検討する必要があります。
経常利益率
経常利益率は、企業の経営活動に関連する収益と費用のバランスを示す指標です。
経常利益率は、売上高から売上原価や販売費及び一般管理費などの経常費用を差し引いた金額を売上高で割ったものです。
経常利益率が高いほど、企業は経営活動において収益を上げることができています。
経常利益率が低い場合は、販売戦略や経費削減などの改善策を検討する必要があります。
税引前当期純利益率
税引前当期純利益率は、企業が税金を差し引く前の純利益の割合を示す指標です。
税引前当期純利益率は、売上高から売上原価や販売費及び一般管理費、さらに営業外収益や営業外費用を差し引いた金額を売上高で割ったものです。
税引前当期純利益率は、企業の営業活動における収益性を示す重要な指標です。
高い税引前当期純利益率は、企業が効果的な経営戦略を展開し、収益を最大化していることを示します。税引前当期純利益率が低い場合は、収益向上や費用削減などの改善策を検討する必要があります。
当期純利益率
当期純利益率は、企業が税金を差し引いた後の純利益の割合を示す指標です。
当期純利益率は、売上高から売上原価や販売費及び一般管理費、さらに税金や特別利益や特別損失を差し引いた金額を売上高で割ったものです。
当期純利益率は、企業の実際の純利益の割合を示し、経営の成果を反映します。
高い当期純利益率は、企業の利益性が高いことを示します。当期純利益率が低い場合は、収益向上や経費削減などの対策が必要となります。
【一覧】損益計算書に記載される5つの利益率
ここまで解説した5つの利益率を、一覧にまとめたので整理して再確認しましょう。
利益率の種類 | 概要 | 計算式 |
---|---|---|
営業利益率 | 会社の営業活動における利益の割合を表す指標 | (営業利益 / 売上高) × 100 |
売上総利益率 | 商品やサービスの売上から得る利益の割合を表す指標 | (売上高 – 売上原価) / 売上高 * 100 |
経常利益率 | 収益と費用のバランスを示す指標で、経営活動に関連する収益の割合を表す指標 | (売上高 – 売上原価 – 販売費及び一般管理費) / 売上高 * 100 |
税引前当期純利益率 | 税金を差し引く前の純利益の割合を表す指標 | (売上高 – 売上原価 – 販売費及び一般管理費 – 営業外収益 + 営業外費用) / 売上高 * 100 |
当期純利益率 | 税金を差し引った後の純利益の割合を表す指標 | (売上高 – 売上原価 – 販売費及び一般管理費 – 税金 + 特別利益 – 特別損失) / 売上高 * 100 |
営業利益率の目安と業種別比較
営業利益率の概要を理解したところで、次に数値の目安や業種ごとの違いを把握してみましょう。
また、そこから読み取れる販売戦略の違いや、営業利益率が高い企業に共通する特徴まで深堀ながら解説していきます。
高いとどうなる?適正目安でチェックしよう
営業利益率は企業の経営状況を把握する上で重要な指標です。
営業利益率の適正水準は業界によって異なりますが、一般的な目標水準は5-10%とされています。
実は、高すぎる営業利益率には注意が必要です。
利益追求を過剰にしてしまうと、組織に対して大きな負担をかけてしまっている可能性があります。
もし該当してしまっていたら、改めて組織体制を見直すべきでしょう。
ただし、業界や経済状況に応じた適正水準が存在し、それに基づいた評価が求められます。
適正な営業利益率の目安は、一般的に下記のイメージです。
営業利益率 | 状態 | 説明 |
---|---|---|
0%以下 | 危険 | 赤字の可能性が高く、経営の見直しが必要 早急な対策が求められる |
0~5% | 一般的 | 平均的な収益性を持つ企業 経営を見直すことで改善の余地がある |
5~10% | 優良 | 投資家からの評価も高く、安定した財務状況を示す |
10%以上 | 非常に優良 | 収益を生み出すビジネスモデルが確立され、安定性が高い |
15%以上 | 注意が必要 | 利益追求が過剰であり、社員や顧客に負担をかける可能性がある 組織体制の見直しが必要 |
業種別の平均値
以下の表は、業種別の売上高営業利益率の平均値です。
営業利益率は、業種によって傾向が異なっているため、同業他社の数値を確認しましょう。
業種 | 売上高営業利益率(平均) |
---|---|
建築業 | 4.02% |
製造業 | 2.69% |
情報通信業 | 4.75% |
運輸業・郵便業 | ▲0.24% |
卸売業 | 1.66% |
小売業 | 1.58% |
不動産業・物品賃貸業 | 9.35% |
学術研究、専門・技術サービス業 | 10.03% |
宿泊業・飲食サービス業 | ▲1.83% |
生活関連サービス業・娯楽業 | ▲0.31% |
サービス業(その他) | 3.82% |
※法人企業と個人企業の合計から算出
※小数点第3位四捨五入
※2020年度のコロナ禍における調査結果である
業種ごとの販売戦略の違い
上記の調査結果を業種ごとに見ると、販売数と取引額の関係が、営業利益率に強い影響を与えていることが分かります。
① 厚利少売業種|営業利益率が高い
不動産業や技術サービス業などの厚利少売をビジネススタイルとする業種では、営業利益率の平均値が比較的高い傾向があります。
これは、販売数が少なく取引額が大きいビジネスモデルにより、売上高に対する営業利益が相対的に高くなるためです。
そのため、少数の取引で高い利益を生み出すことに重点を置いています。
② 薄利多売業種|営業利益率が低い
一方、小売業や卸売業などの薄利多売をビジネススタイルとする業種では、営業利益率の平均値が比較的低い傾向があります。
これは、販売数が多く取引額が小さいビジネスモデルにより、売上高に対する営業利益が相対的に低くなるためです。
一つの取引の利益は少ないものの、多くの取引を行うことで総利益を増やすことを目指しています。
以上のことから、自社の業界の特性やビジネスモデルを考慮し、適切な販売戦略を選択することが重要であると分かるでしょう。
営業利益率が高い企業の特徴
営業利益率が高い企業には、共通して3つの特徴が見られます。それぞれ確認してみましょう。
高付加価値な商品サービスを提供している
営業利益率の高い企業は、顧客に対して高い付加価値を持つ商品やサービスを扱っています。
これにより、顧客はその商品やサービスに対して購入価値を感じ、高い価格を支払う意欲が生まれています。
効率的な営業活動を実施している
営業利益率の高い企業は、販売費用や一般管理費の見直しや削減、効果的な販売チャネルの選定、効率化されたプロセスの導入などを十分に実施しています。
効率的な営業活動によって、売上高を最大化し同時に費用を最小化することで営業利益率を向上させます。
マーケットの需要に対応した事業展開をしている
営業利益率の高い企業は、需要の高まっている市場において事業展開を行っています。
市場のトレンドや需要動向を把握し、需要の高い商品やサービスを提供しています。
営業利益率の分析における着眼点
営業利益率の分析は、企業の経営成績を正確に把握するために重要な手法です。
以下に、営業利益率の分析における着眼点を紹介します。
計算式を分解してバランスを見る
前述の通り、営業利益率は、売上高から売上原価と販売費及び一般管理費を差し引いた値で計算されます。
営業利益率 = (営業利益 / 売上高) × 100
この計算式を要素ごとに分解し、売上高に対するコストが適正であるかどうかを検討します。
売上高営業利益率の分子部分である営業利益に注目し、売上原価や販売費及び一般管理費とのバランスを評価します。
前年度と比較する
営業利益率を分析する際には、前年度のデータとの比較も重要です。前年度との比較によって、成長や減少の傾向を把握することができます。
営業利益率が向上している場合、経営改善の効果やコスト削減の成果が見えるでしょう。
逆に、営業利益率が低下している場合は、問題の発見や改善策の検討が必要です。
売上高総利益率と比較する
営業利益率だけでなく、売上高総利益率との併用比較も重要です。
売上高総利益率の計算式は下記の通りです。
売上高総利益率 = 売上高総利益 ÷ 売上高 × 100
※ 売上高総利益=売上高-売上原価
式から分かるように、売上高総利益率は売上原価が高い状態だと、低くなります。
売上高総利益率が高ければ、企業の営業力や商品の品質が良いと判断できます。
そのため、営業利益率と売上高総利益率を比較することで、コストと利益のバランスを正しく評価することができます。
経常利益率と比較する
経常利益率との併用による比較も重要です。
経常利益率は売上高に占める経常利益の割合を示します。
経常利益率 = 経常利益 ÷ 売上高 × 100
経常利益は、営業利益に本業以外の収入と費用を足し引きした値です。
経常利益率が高ければ、企業の本業以外の収入や費用の管理がうまくいっていると判断されます。
以上が営業利益率の分析における着眼点です。
このように、営業利益率の分析においては、これらの指標との比較が重要です。営業利益率だけでなく、他の比率も分析に取り入れることで経営全体の健全性を高めましょう。
営業利益率を高めるには?
営業利益率向上の大枠は、「売上を上げる・原価を下げる」の2つの方向性です。
下記では、そこからさらに分解して紹介していきます。
売上原価を削減する
売上原価を削減することは、営業利益率の向上に重要です。
原材料コストや製造人件費の削減を通じて、売上原価を効果的に削減することができます。
しかし、リスクもあるため慎重に対策を検討する必要があります。
販売単価を上げる
販売単価を上げることにより、もちろん利益は増え、営業利益率も向上します。
値上げを行う際には、顧客に付加価値を提供、もしくは認識させることで、価格上昇を正当化し納得感を持って購入してもらえるような取り組みが重要です。
販売数量を増やす
営業体制の強化は、販売数量増加に最も繋がる要素です。現在の営業力を向上させ、販売先を増やすためには、営業代行会社などへの委託を検討することも一つの手段です。
営業代行会社は、既存のネットワークや専門知識を活かして新たな販売チャネルを開拓し、販売の拡大をサポートしてくれます。
また、販売先の拡大においては、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客のロイヤルティを高める施策も必要です。定期的な顧客フォローアップやクロスセリング、アフターサービスなどを通して、顧客満足度を向上させる取り組みをしてみましょう。
販売構成比の戦略を見直す
利益率の高い商品やサービスの構成割合を増やすことで、全体的な営業利益率を向上させることができます。
売上高の中での各商品やサービスの販売比率を見直し、利益率の高いものに重点を置く戦略を検討しましょう。
固定経費を見直す
固定経費の見直しは、販売管理費の効率的な削減につながります。
テナント物件や保険料の見直しを行い、賃料や保険料を削減することで経費削減を実現します。
また、リモートシステムの導入により通信費を削減するなどの、効果的なコスト削減策も検討しましょう。
外注による変動経費の削減
営業利益率向上のために、特に変動経費の削減は実現可能性が高い手段です。
特に最適化しやすい人件費においては、外部の専門業者や営業代行会社に業務を委託することや、最新の営業効率化ツールの導入によって、販売費用を効率化し、生産性を上げることが効果的です。
弊社が提供する営業支援サービス「mycsess」では、小規模事業者を中心とした中小企業向けに、ビジネスマッチングを通じて案件紹介から案件獲得まで一気通貫で受注までたどり着けます。
また、外注によって得られたノウハウを社内に内製化することも重要な要素です。社内のチームや従業員に外部の専門知識を教育し、生産性を向上させることで、中長期的な変動経費削減を実現できます。
しかし、むやみに人件費などの変動経費を削減するのは注意が必要です。
このように、短期的な効果と持続的な中長期の改善の、両側面を意識して、外部からのリソースやスキル、ツールを借りながら、計画的に組織内の生産性を高める取り組みを行ってみましょう。
これらの方法を柔軟に組み合わせて戦略的に取り組むことで、営業利益率の向上が期待できます。
まとめ
今回の記事では、営業利益率の算出方法や分析のポイント、業種別の目安について具体的に解説しました。営業利益率は企業の経営において重要な指標です。
分析においては他の比率との比較を行い、経営全体の健全性と収益力を確認しましょう。
また、営業利益率を向上させるための具体的なアプローチ方法も紹介しました。
その中でも特に着手しやすい変動経費の削減に関しては、優先的に組織内の生産性を高めるための検討が必要です。
中長期の視点で、早期から取り組むことで、営業利益率の改善を目指していきましょう。
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