この記事はこんな人におすすめ!
「リード獲得はできるが商談化率、受注率が伸びない」
「インサイドセールスの組織を強化したい」
このようにお悩みの経営者、営業職の方が最近増えています。
近年は営業スタイルそのものが多様化し、リード(見込み顧客)との向き合い方が徐々に見直されてきています。
そこで鍵となる「リードナーチャリング」について、本記事では実務ベースで分かりやすく解説しています。是非、最後までご覧ください。
リードナーチャリングの意味
リードナーチャリングとは、一言でいうと「見込み顧客の育成」です。
具体的には、集めたリード(見込み顧客)に対して、SNSやメールを通じて継続的にコミュニケーションを取ることで、検討度を上げる手法やプロセスのことです。
「リード」とは、まだ顧客ではないが、潜在的な関心を示す人々を指します。
例えば、あなたがECサイトで商品を閲覧したり、無料の資料をダウンロードしたりしたとき、企業にとってあなたはリードとして捉えられます。
「ナーチャリング」とは、「育てる」「世話をする」といった意味を持つ言葉です。
つまり、「見込み顧客を顕在的な顧客に変えるためにケアや育成を行う」という意味をもちます。
「恋愛」に置き換えると分かりやすい
リードナーチャリングを身近な例で説明すると、「恋愛」に似ています。
初対面の相手をすぐに結婚に持ち込むことは難しいですよね?
最初はデートを重ねて相手を知り、信頼を築き、愛情を育む必要があるのと同様に、ビジネスでも見込み顧客をすぐに顧客に変えるのは難しいため、着実に関係を築いて信頼を得るプロセスが必要なのです。
Webマーケティング全体での位置づけ
Webマーケティングにおいて、リードナーチャリングは重要な位置を占めています。
それを理解するため、まずはマーケティングの全体像を掴み、それがどのような役割を果たし、なぜ必要なのかを整理しましょう。
リードジェネレーションの効果
リードジェネレーションは、「見込み顧客を獲得」するためのプロセスです。
これは、顧客から興味を持ってもらい、初めての接点を築く重要なステップであり、前提にリード(見込み顧客)が存在しないとナーチャリングも出来ません。
獲得方法としては、自社Webサイトからの問い合わせや、展示会での名刺獲得などが無難です。
また、飛び込みやテレアポなどの営業活動もリードジェネレーションに該当します。
いかに早期段階から多くの潜在顧客と接触し、見込み顧客の個人情報を収集できるかが、この段階では肝となります。
前項と同様に恋愛で例えると、リードジェネレーションは「恋人探し」「自分磨き」の段階です。
出会いを求めて積極的に新しい環境(展示会やイベント)に足を運んだり、少しでも興味を持ってもらうために自分(自社商材やLP)を磨く努力をしたりするのと、同じ活動と言えます。
リードナーチャリングの効果
リードナーチャリングは、前述の通り「見込み顧客の育成」のプロセスです。
リードジェネレーションで獲得した見込み顧客の購買意欲を上げ、検討度を上げる施策を行います。
これは恋愛における「デート」「交際」の段階と似ていて、相手との信頼関係を築くためには、時間をかけて相手の趣味や価値観を知り、お互いに深い絆を築いていく期間が大切です。
放置していれば、すぐに異性に奪われてしまうでしょう。
それと同様に、リードナーチャリングではSNSやメールを通じて顧客との信頼を築き、関係を深めます。これによって、将来的な取引の可能性を高めていくのです。
リードクオリフィケーションの効果
リードクオリフィケーションは、見込み顧客の中から最も「有望な顧客を選別」するプロセスです。
有望な顧客のみを営業部門に引き継ぐことにより、最も確度の高い顧客に集中して効率的に営業をかけることが可能になります。
有望な顧客と判断したら、「最初の接触方法」「顧客属性」「行動履歴」「顧客の取得済み情報」の項目で分類・分析してアプローチの準備をします。
恋愛でも「結婚前の選別」を行うのと同じく、恋人関係において、将来のパートナーを選ぶ際には、相性や共通の価値観が重要です。
ビジネスでも同様に、それを慎重に判断してからアプローチするのです。
なぜリードナーチャリングが必要なのか
ここからは、リードナーチャリングが必要になった背景について、3つに分けて解説します。
放置すると80%を競合に奪われるため
驚くかもしれませんが、リード獲得後に営業担当者が「見込みなし」と判断して、追客をしなかった顧客の8割は、2年以内に競合他社から製品を購入しているという調査結果が出ています。
つまり、リードナーチャリングをしないと同じ土俵にすら立てず、多大な機会損失を招く時代になってしまったということを意味します。
リード獲得数は増加傾向ですが、放置して取りこぼしがないように、検討タイミングを見計らった継続的なコミュニケーションができる仕組み設計が必要でしょう。
購買プロセスが長期化・多様化したため
リードナーチャリングの必要性は、購買プロセスが以前よりも長期化し、多様化していることにも関連しています。
インターネットの普及により、顧客は情報を能動的に入手でき、比較検討する時間を長く持つようになりました。
そのため、リードタイム(購入までの時間)は数カ月以上かかることが一般的になりました。長期間、見込み顧客を放置しておくことは企業にとって大きな機会損失です。
特にBtoB企業が扱う商材は高額であることが多く、リードタイムはさらに中長期になるため、リードナーチャリングは必要不可欠です。
また、BtoCでも不動産や自動車などの高額商品であれば必要と言えるでしょう。
さらに、情報が多様化して購買プロセスも多様化したため、有益な情報提供が必要です。
リードナーチャリングでは、長期的な視点で見込み顧客の購買検討をサポートし、彼らの情報ニーズを満たすことが求められています。
営業活動の効率化のため
最後に、リードナーチャリングが必要な理由として、営業活動の効率化が挙げられます。
一般的に獲得した見込み顧客で、購買意向が高いリードはほんの一部です。
獲得した中で、すぐに営業活動をするに値しない顧客は75%を占めるという調査結果もあります。
そのため、過半数のリードがすぐに商談に進むのではなく、彼らを効果的にフォローし、興味を持たせてから商談を実施する必要があります。
また、一般的な受注率は20~30%なので、過半数の失注後顧客も追客することで、再び商談に引き上げられれば、営業効率は向上します。
一方、過去に取引があったが放置された状態の休眠顧客を減らすためにも、リードナーチャリングは必要です。
このようにリードナーチャリングは、確度の高い見込み顧客を次の段階に引き継ぎ、営業活動を効果的に進めるための効果的な戦略です。
リードナーチャリングの担当者・7つの方法
リードナーチャリングの活動は誰が担うのか、また具体的にどのように実施するのか解説します。
担当者はインサイドセールス
Webマーケティングが発展し、見込み顧客の獲得が容易になったことで、多くの企業で営業活動のプロセスが変化しました。
従来は1名の営業担当者が全プロセスを担うことが一般的でしたが、Webマーケティングの発展により、今では「THE MODEL」と呼ばれる分業体制が浸透しています。
この分業体制において、リードナーチャリングを主導的に担当する役割の一つが「インサイドセールス」です。
インサイドセールスは、リードナーチャリングの中核を担う役割として重要で、以下の4つの役割が求められます。
- リードの初期段階のケア
- リードのニーズ特定
- リードとの信頼関係の構築・維持
- リードの移行
見込み顧客が購入の意思を表明する段階に達したとき、フィールドセールスやカスタマーサクセスに引き継ぎを行う重要な役目が、インサイドセールスにはあります。
方法①メール
ここから、主にインサイドセールスが見込み顧客を育成するために実施する、7つの方法をご紹介します。
初めに、メールはリードナーチャリングの基本的な手法の一つです。
方法②オウンドメディア
オウンドメディアとは、自社で発信するブログのようなものです。
これは検索エンジンを利用する見込み顧客に有益な情報を提供して、育成する方法です。
★オウンドメディアのSEO対策については、こちらの記事で詳しく解説しています。
方法③リターゲティング広告
リターゲティング広告は、ウェブサイトを訪れたリードに対して広告を表示する方法です。
★リスティング広告については、こちらの記事で詳しく解説しています。
方法④SNS
SNS活用は、リードナーチャリングに限らずマーケティング全般で欠かせない手法です。BtoB企業においても、活用しない手はありません。
★企業のSNS運用については、こちらの記事をご覧ください。
方法⑤電話
電話は、見込み顧客と個別に直接的コミュニケーションができる有効な手段の1つです。
※MAツール…“Marketing Automation”の略で、マーケティング自動化ツールのこと
方法⑥セミナー
セミナーは、具体的な課題をもった複数の見込み顧客と直接会話ができる手法です。
方法⑦その他のアナログ手法
ここまでご紹介したデジタルを活用したナーチャリング手法以外にも、アナログ的な人脈構築はやはり強力です。
アナログ的な接触は、デジタルコミュニケーションよりも記憶に残りやすい傾向があります。
人間関係の構築では、直感的で感情的な部分も含むため、リアルな場で人間的要素を上手く出せば、上手く見込み顧客を育成できるようになるでしょう。
リードナーチャリングの具体的な進め方
続いて、リードナーチャリングの具体的な進め方を、4つのステップに分けて解説します。
ペルソナとKPIを設定する
リードナーチャリングの第一歩は、ターゲットとなるペルソナ(顧客像)を明確にすることです。
ペルソナ設定では、「性別」「年齢」「趣味」「職業」などの情報を考慮して、理想的な顧客像を描き出します。その際、必ずペルソナがもつ悩みを考えて、それに対する打ち手もクリアにしておきましょう。
さらに、最終目標から逆算して、定量的なKPIを細かく設定し、成果を評価・分析できるようにします。
リードナーチャリングは「見込み顧客の育成」という言葉であるため、抽象的に考えがちです。
そのため、具体的なペルソナとKPIを設定して、筋道立てて進めていくことが鍵となります。
カスタマージャーニーマップを設計する
次に、カスタマージャーニーマップを設計します。
これは、見込み顧客が商品・サービスを知り、購入やリピートに至るまでの過程(購買プロセス)を見える化したものです。
※カスタマーとは「顧客」、ジャーニーは「旅・行程」の意味
カスタマージャーニーマップを作成することで、見込み顧客がどの検討フェーズにいるかを明確にし、必要なタッチポイントを洗い出せば、それに応じた施策を計画することができます。
営業担当者によって検討段階別のアプローチ方法が異なると、引継ぎの際に齟齬が発生する可能性があります。
そのため、組織全体の共通認識を作り、育成サイクルを安定させるうえで、カスタマージャーニーマップは非常に有効です。
リードリストを整理する
リードリストの整理は、リードナーチャリングの中核にあたる部分です。
同じ検討フェーズの見込み顧客でも、SNSから獲得した人と、セミナーで獲得した人ではアプローチ方法をそれぞれ変える必要があります。
そこで、見込み顧客の属性や行動履歴などをもとに、セグメンテーション(分類)を行います。
これにより、各セグメントに対してカスタマージャーニーマップをもとに、最適な施策を実行することが出来ます。
施策の種類については、前項「リードナーチャリングの担当者と方法」をご覧ください。
コンテンツを制作する
リストを整理して施策を決めたら最後に、コンテンツを制作します。
ペルソナやカスタマージャーニーマップに基づき、見込み顧客が求める有益なコンテンツを制作しましょう。
また、リードナーチャリングを仕組み化する際、「コンテンツのバランス」も重要です。
カスタマージャーニーマップと照らし合わせて、どの検討フェーズに対するコンテンツが不足しているのか見極めて、補填していくことで育成サイクルも安定して来るでしょう。
いずれにせよ、どの検討フェーズ・どのセグメントの見込み顧客が何を求めているのか、どのようなアクションを起こしてほしいのかを、顧客目線で考えた上で作成に取り掛かりましょう。
ペルソナ・KPI設定からカスタマージャーニーマップの設計、リードリストの整理、そして魅力的なコンテンツの制作まで、段階を追って進めることで、着実に顧客に変える道筋が開けるでしょう。
リードナーチャリング成功の秘訣「顧客視点のコミュニケーション設計」
リードナーチャリングが失敗する根本的要因として、リードナーチャリングの全体像を描けていないことが挙げられます。
多くの場合、単にMA(マーケティングオートメーション)ツールを導入するだけ、あるいは闇雲にインサイドセールスの部署を設置するだけの部分的施策が行われ、失敗に終わることがあります。
リードナーチャリングを成功させるためには、第一に「コミュニケーションの最適化」から考える必要があります。
そのためには、見込み顧客の視点に真摯に立って、「顧客自身を理解する」ことが不可欠です。
顧客理解の方法として、以下の施策などがあります。
- 顧客インタビュー
- ソーシャルリスニング
- ユーザーテスト
- 営業データ・過去事例の分析
- 他部署との情報共有
まずは顧客インタビューやソーシャルリスニングを通して、ペルソナをより詳細に作り込むことから始めてみましょう。
すでに作ってある場合でも、必ず見直しを行い、現在の環境に合わせてさらに解像度を高めてみましょう。
リードナーチャリングの成功事例
最後に、リードナーチャリングの成功事例を2つピックアップして、ご紹介します。
株式会社シンフィールド
~巧みな名刺活用とメールマーケティング~
株式会社シンフィールドは、漫画を使ったWebマーケティングである「マンガマーケティング」を中心に提供する会社です。
同社で実施されたリードナーチャリングの流れは、以下の通りです。
①リストの収集
‥展示会やセミナーを自社開催し、名刺を集め、リードリストを作成する
②メールマーケティング
‥収集したリストに対して、お役立ちメールと営業メールを交互に2週に1度配信する
③フォローアップ
‥営業メールにはURLが貼られており、クリックした受信者にはフォローアップの電話を入れる
このリードナーチャリング戦略により、フォローコールからのアポイント率が10~15%に達し、アポイントからの成約率も向上するという高い成果を上げています。
株式会社マックスプロデュース
~コンテンツマーケティングで確度を高める~
株式会社マックスプロデュースは、イベントの制作やプロデュースを手掛ける企業です。
同社はリードナーチャリングで、以下の方法を実践しました。
▶オウンドメディアの活用
オウンドメディアを立ち上げ、お役立ちコンテンツを積極的に投稿しました。
さらに、社員総会やイベントの演出方法に関するノウハウを提供し、イベントの幹事からの認知獲得を図りました。
▶無料資料の配布
社員総会に関連する情報として、会場リストや会場レイアウトサンプルなどの具体的な情報は、ホワイトペーパーの形で配布しました。
これにより、ダウンロードへの誘導に成功し、確度の高いリードリストを獲得したことで、効率的に新規顧客を獲得できる仕組みづくりを実現しました。
参考記事:CMS×オウンドメディア活用成功事例
まとめ
リードナーチャリングで大切なのは、常に一歩引いて、俯瞰的に全体像を把握しておくことです。
そうすることで、ターゲットとなる見込み顧客の具体像が鮮明になり、取り掛かるべき施策、コンテンツが明らかになります。
【リードナーチャリング7つの方法】
①メール
②オウンドメディア
③リターゲティング広告
④SNS
⑤電話
⑥セミナー
⑦その他のアナログ的手法
【リードナーチャリングの具体的な進め方】
①ペルソナとKPIを設定する
②カスタマージャーニーマップを設計する
③リードリストを整理する
④コンテンツを制作する
本記事の情報は、貴社のWebマーケティングに確実に役立つ内容になっています。
明日から是非実践してみてください。
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